脳梗塞は時間との闘いです。

脳梗塞Q&A

基本・素朴な質問

脳卒中は予防できるのですか。その方法を教えてください。
脳卒中は、脳の血管がつまる脳梗塞、脳の細い血管(0.3mm前後)が破れて出血する脳出血、脳の表面を走る動脈のコブ(動脈瘤)が破れて脳を包んでいるクモ膜のすき間に出血するクモ膜下出血の総称です。脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血、いずれも予防可能です。
脳卒中の予防には、高血圧や糖尿病にならないように注意する、たばこをやめる、大酒を飲まない(1日に日本酒なら1合、ビールなら中ビン1本以下が目安)ことが重要です。高血圧の予防には、食べ過ぎに注意し、塩分控えめの食事、カリウム(野菜や果物に多く含まれています)の摂取、運動(少し汗ばむ程度の早歩きを毎日30分)をすることが有効です。
既に高血圧、糖尿病、高コレステロール血症と診断されている方は、それらの治療を継続することが脳卒中の予防につながります。
心房細動(不整脈の一種)は高齢者に多く、これがあると脳梗塞になりやすいことが分かっています。心電図で容易に診断できますので、心電図検査を受け、心房細動があれば、脳卒中予防のための治療を受けましょう。
脳卒中の前触れはあるのですか。前触れがあったらどうすればよいのですか。
脳梗塞の前触れとして、一過性脳虚血発作が知られています。一過性脳虚血発作は、突然脳卒中の症状がおこり、普通5-15分間以内に、長くても24時間以内に治ってしまう発作です。片方の手と足に力がはいらなくなる、体の半分(顔を含む)がしびれる、ろれつがまわらなくなる、言葉がでなくなる、相手の言うことをよく理解できない、片側にあるものに気がつかないためにぶつかってしまう、片方の目にカーテンがかかったように見えなくなる、物が二重に見える、一側の視野が欠ける、めまいがする、ふらつく、力はあるのに立てない、歩けない、などが脳梗塞や脳出血の症状です。なお、クモ膜下出血の症状は、今までに経験したことのないような激しい頭痛が突然生じ、意識がなくなりますが、通常、手足の麻痺は起こりません。
一過性脳虚血発作は、症状が短時間で消えてしまうために軽く考えられがちですが、放置すると約2割の方は数年以内に脳梗塞になります。治療によって脳梗塞になるのを予防することが可能ですので、必ず専門医を受診してください。
また、症状が現れた時点では一過性脳虚血発作と本物の脳梗塞とは区別できませんので、すぐに救急車を呼んで専門医を受診してください。
脳卒中になったらどうすればよいのでしょうか。
たとえ夜中であろうと、休日であろうと、すぐに救急車を呼んで、専門医のいる病院へ搬送してもらうことが大切です。一過性脳虚血発作を経験した方、家族に脳卒中経験者がいる方、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心房細動、喫煙習慣、多量飲酒習慣のある方は、いざという時にどこの病院に行ったらよいのか、日頃からかかりつけ医に相談しておくことが重要です。
脳卒中急性期は入院治療が原則です。脳卒中に精通している医師・看護師・リハビリテーションスタッフの居る病院で治療を受けると、死亡率が下がり、回復が良いことが分かっています。最近では発症後ごく早期(4.5時間以内)であれば劇的に効果がある治療法もあります。とにかく、できるだけ早く救急車を呼んでください。備えあれば、憂いなし。日頃から、いざという場合のことを考えておきましょう。
脳卒中になったらどの程度回復するのでしょうか。
発症後1年以内に約2割の方が亡くなられます。生き延びた方の約7割は自分の身の回りのことができるようになります。あきらめずに、リハビリテーションによって機能回復をめざしましょう。脳卒中後の回復は個人差がありますが、普通、最初の数ヶ月で著しく回復し、その後、半年くらいまで緩やかな回復が続きます。発症後半年をすぎると回復はさらに緩やかになります。
回復が頭打ちになってきても、なんらかの形でリハビリテーションを続けてください。寝たきり、自宅での閉じこもりを続けていると、体の動きが全体的に弱ってきます。病院だけがリハビリテーションの場ではありません。デイサービスやデイケア、そして日常生活そのものがリハビリテーションの場です。
後遺症が残っても、それで人生が終わるわけではありません。患者会の活動などに参加して、少しでも生きがいのある生活をめざすことが重要です。各地の患者会の情報は日本脳卒中協会ホームページ(http://www. jsa-web.org/)に掲載されていますのでご参照ください。

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脳梗塞、私の場合〜東京工科大学バイオニクス学部教授山本順寛氏の体験から

脳梗塞を起こされた時、最初はどのような様子だったのでしょう?
ある朝、目覚めますと右の手足に違和感を覚えました。何かに押さえつけられているような、引っ張られているような感覚です。しかし、意識ははっきりしていましたので、そのまま起きて顔を洗い、食事をしたのですが、箸を持つ右手に力が入りません。「これはちょっとおかしい」と思ったものですから、大学に出勤する前、念のため主治医の池田幸穂先生に電話を入れ、症状をお話しました。すると、「すぐ来院しなさい」と言われ、電車に乗って病院へ向かいました。その時も、足がふらつくようなことはありませんでした。

脳梗塞はどのように診断されるのですか?
山本先生の場合は、まず頭部CT撮影で左の「視床」に脳梗塞の病巣を認めたので、更に詳しい診断のためMRI撮影を行い(MRI画像・右写真)、臨床症状に合致した脳梗塞を確認しました。視床は、脳の深いところにあり、感覚の中継点となる部位です。問診でも右手足のしびれ、感覚の異常という左の視床部に関連した異常(感覚を伝える神経は脊髄や脳幹で交叉しています)を確認しており、臨床症状とも一致していました。以上のことから、脳梗塞と診断しました。
図:山本先生のMRI画像(矢印脳梗塞病巣部位)
※通常CTやMRI画像は、左右が逆に撮影されます(下から見た像になる)。

脳梗塞を発症する前触れのようなものはありましたか?
発症の前日、どこがというわけではないのですが、「何か身体がおかしい」という感じがありました。ただ、その日は普通に大学に行き、講義もしましたので、特に気に留めませんでした。しかし振り返ってみますと、それが脳梗塞の前触れ症状だったかもしれませんね。
その後の経過は順調ですか?
早い時期に受診し、治療を受けましたので、症状は軽く、2週間ほどで退院することができました。また、入院直後から早期リハビリテーションを行ったこともあって、後遺症も残らず、今では以前と同じペースで仕事を続けています。

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脳梗塞の病態について

「脳梗塞」ってどんな病気ですか?
脳梗塞は、脳の血管が詰まる病気です。血管が詰まるとその先に血液が流れなくなり、酸素や栄養が不足します。この状態が長く続くと、脳細胞が壊死(体の組織や細胞が局部的に死ぬこと)し、手足のマヒや言語障害などさまざまな障害が起こってきます。なお、脳梗塞は、血管の大きさや詰まり方によって3タイプに分類されます。
「脳梗塞」と「脳卒中」の違いがよくわからないのですが?
脳の血管異常によって起こる障害を総称して「脳卒中」と呼びます。この中には、脳の細い血管が破れて出血する「脳出血」、血管のこぶが破裂する「クモ膜下出血」、そして「脳梗塞」の3つが含まれます。ですから、脳梗塞は脳卒中の1タイプとご理解ください。
かつて日本人の脳卒中といえば、脳出血が中心でした。しかし最近では、脳梗塞が増え、全体の7割を占めるようになっています。
脳梗塞はどのような原因で起こるのですか?
脳梗塞が起こりやすくなる原因(または危険因子)となるのは、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満といった生活習慣病や心臓病、喫煙などです。生活習慣病や喫煙は、脳梗塞の下地となる動脈硬化を促進します。また、脈数が異常に速く不規則になり、動悸やめまいなどの症状がでることもある「心房細動」という病気があると、心臓に血栓(血の固まり)ができやすく、それが脳に飛んで脳梗塞を起こしやすくなります。

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脳梗塞急性期の治療について

脳梗塞ではなぜ早期治療が大切なのですか?
脳梗塞が起こると、数分後には脳細胞が壊死し始めます。そして、時間がたてばたつほどダメージが広がり、後遺症も大きくなります。したがって、後遺症を少しでも軽くするためには、一刻も早く医療機関で診断を受け、治療を始めることが必要なのです。
脳梗塞急性期にはどのような治療を行うのですか?
脳梗塞の発症直後は薬物治療が基本で、「血栓溶解療法」、「抗血小板療法」、「抗凝固療法」、「脳保護療法」などが行なわれます。
「血栓溶解療法」は、血管に詰まった血栓を、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)という薬で溶かし、血流を再開させる方法です。また、「抗血小板療法」は血小板の働きを抑えて、血液が固まるのを防ぐ治療法です。
脳梗塞急性期の治療法
血栓溶解薬(t-PA) 抗血小板薬 抗凝固薬 脳保護薬
血管に詰まった血栓を溶かし、血流を回復させる薬です。発症4.5時間以内に投与すれば、大きな効果が期待できます。 血小板の働きを抑え、動脈内で血栓ができないようにし、急性期の悪化と再発を防ぐ薬です。アスピリンなどが広く用いられています。 血液を固まりにくくすることで、心臓や静脈内で血栓ができないようにし、脳梗塞急性期の悪化と再発を防ぐ薬です。 脳梗塞が起こったときに発生する有害物質(フリーラジカル)を取り除き、脳細胞を壊死から守る薬です。後遺症を軽減する効果が確かめられています。
「脳保護療法」についても教えてください。
脳梗塞で血流が途絶えると、脳細胞にダメージを与えるフリーラジカルという有害物質が発生します。このフリーラジカルを脳保護薬で取り除き、脳を守るのが「脳保護療法」です。新しいタイプの治療法で、発症後24時間以内にこの薬を用いれば、後遺症を軽くする可能性が高くなります。

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こんな症状が脳梗塞のサイン

脳梗塞が疑われるのは、どのような症状が起こった場合ですか?
片方の手足がしびれる、足がもつれる、手足に力が入らない、ろれつがまわらない、言葉がとっさに出てこない、他人の言うことが分からない、ものが見えにくい、といった症状が1つでもあれば脳梗塞が疑われます。こんな症状に気づいた時は、様子をみようなどとは考えず、ただちに病院に駆けつけることが大切です。

脳梗塞には「前触れ発作」があるということですが・・・
脳梗塞の患者さんの約3割は、本格的な発作を起こす前に「TIA(一過性脳虚血発作)」と呼ばれる前触れ発作を経験しているといわれます。
TIAの症状は脳梗塞と同じですが、数分〜30分で消えてしまいます。このため放っておく人が多いのですが、いったんTIAを起こすと、その後、脳梗塞を発症する危険性が高くなります。
脳梗塞を予防するには、この前触れ発作を見逃さないことがポイント。TIAの段階で検査を受け、治療すれば、脳梗塞を未然に防ぐことも可能です。
目に症状が出ることもあると聞いたのですが?
頚動脈に強い動脈硬化がある場合、一過性黒内障といって、急に片方の視力が落ちて、数秒から数分で回復する症状があります。これは、頚動脈にできた血栓の一部がはがれて、眼動脈に流れ込んで起こるものです。一過性黒内障は、症状が数分以内に回復するため、ただちに医療機関で受診するということは少ないようですが、特に注意が必要なTIAの1つです。