脳梗塞は時間との闘いです。

脳梗塞コラム

第3回 脳梗塞の再発予防

[2017.04.24.]

脳梗塞は再発しやすい病気です。再発すると重症化しやすく、命に関わることも少なくありません。そんな脳梗塞の再発を防ぐためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。自治医科大学内科学講座神経内科学部門主任教授の藤本茂先生に再発予防について伺いました。

脳梗塞、再発しやすいタイプは? 再発しやすい時期は?


脳梗塞にはいくつかのタイプがあり、タイプによって再発率や重症度、薬剤の選択などが異なります。脳梗塞を発症したことがある方は、自分はどのタイプの脳梗塞だったのかを主治医に確認しておき、再発予防に役立てることが大切です。 詳しくは「脳梗塞の種類 」をご覧ください。

3つのタイプの中でもっとも再発しやすいのは「心原性脳塞栓症」です。重い症状が出やすく、死亡率も高いのが特徴です。次にアテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞と続きます。

脳梗塞の急性期(発症後3週間程度)は、特に心原性脳塞栓症やアテローム血栓性脳梗塞の再発率が高いといえます。基礎疾患として心房細動という不整脈のある方、脳の大血管(内頸動脈、中大脳動脈、脳底動脈など)に狭窄や閉塞のある方、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの複数の基礎疾患をもっている方はより再発率が高くなります。

最近注目されている原因不明タイプの脳梗塞


これまでは、これら3つのタイプが脳梗塞の発症のほぼ3分の1ずつを占めるといわれていました。ところが近年、これらのほかに、原因がよくわからない脳梗塞(潜因性脳梗塞)が25%程度、存在することがわかり注目されています。

そのなかでも多いのが、ESUS(イーサス)と呼ばれる血栓ができた場所が特定できない脳梗塞(塞栓源不明の脳塞栓症)です。代表的なものに、心臓と頸動脈の間にある大動脈の動脈硬化が原因と考えられる「大動脈原性脳塞栓症」と、通常の検査ではわからない発作性心房細動が原因と考えられるものがあり、どちらも非常に再発率が高いといわれています。
初回の脳梗塞の原因がよくわからない場合には、再発予防のためにも大動脈の動脈硬化のチェックが重要になります。経食道心エコーの検査で、大動脈に4ミリ以上のアテローム(粥腫)がある場合は注意が必要です。

再発すると新たな後遺症が加わり、ADLが低下する




脳梗塞を再発すると、新たな後遺症が加わりますから、それだけADL(食事、歩行、排泄などの日常生活動作)が低下します。これまで杖を使って歩行できた人も、麻痺が重くなって歩けなくなったり、会話ができていたのに言葉が出なくなったりすることもあります。

また、初回は右側、再発時は左側と、脳の両側に梗塞が起きることで、「仮性球麻痺」という症状が出ることがあります。非常に強い嚥下障害が起こるため、経口摂取ができなくなる、誤嚥性肺炎になるといった危険が高まります。口から食べられなくなると栄養状態が悪くなり、感染症にもかかりやすくなり、肺炎や肺炎症候群などの合併症も起きやすくなります。その結果、生命予後の維持も難しくなります。
最近、フレイル(虚弱)という言葉が医療の現場で使われますが、病気を繰り返すことによって、ドミノ倒しのようにどんどん虚弱になっていくのです。

再発予防の基本は薬、自己判断でやめるのは危険!



脳梗塞は、脳の血管に血栓が詰まる病気ですから、再発予防には、血栓ができないようにすることが大切です。そのためには、血栓を予防する抗血栓薬、いわゆる「血液をサラサラにする薬」を服用します。

脳梗塞の再発予防のお薬は、基本的には一生飲み続けていかなければなりません。自己判断で勝手にやめてしまう方がいますが、それは非常に危険です。
脳梗塞の再発予防に使われるお薬は、高血圧の薬のように、成果が数値として実感できないので、「飲まなくても大丈夫だろう」と考えてしまう人がいますが、それは大きな間違いです。薬を途中でやめたり、飲み忘れたりすることで、再発する方が非常に多いのです。
薬は決められた用法・用量どおりに、毎日確実に服用することが重要です。患者さん本人が薬の管理をできないときには、ご家族など周りの方がサポートしていただきたいと思います。

アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞には抗血小板薬


脳梗塞の再発予防に使われるお薬は、脳梗塞のタイプや治療の時期によって異なります。

まず、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞など、血液中の血小板が凝集して血栓ができるタイプの脳梗塞には、血小板の作用を抑える「抗血小板薬」を服用します。

脳梗塞に使われる抗血小板薬は、急性期(発症後3週間程度)には、血栓ができるのを強力に抑えるために、2剤併用療法(DAPT)が行われることが多いのですが、いつまでも2剤併用を続けていると、血栓を防ぐメリットより脳出血などを起こすデメリットのほうが大きくなる危険性がありますから、症状の軽い人なら3週間程度、長くても3カ月程度で単剤に切り替えるほうがよいと思います。

単剤に切り替えるときは、その患者さんに合わせて医師が薬剤を選択します。
たとえば、ラクナ梗塞は穿通枝(せんつうし)という細い血管で起きる梗塞で、高血圧を背景にしています。出血リスクが高いので、出血リスクが少ない薬を使用します。
また、アテローム血栓性脳梗塞では、脳の血管障害だけでなく、心臓の冠動脈、足の末梢動脈など、全身に動脈硬化を合併していることが多いため、脳血管障害と冠動脈疾患、末梢動脈疾患に適応をもっている薬が使いやすいでしょう。

心原性脳塞栓症には、抗凝固療法


心原性脳塞栓症の原因となる心臓の血栓は、血小板ではなくフィブリンという血液凝固たんぱくが主体になります。したがって、再発予防には抗凝固薬を服用し、血栓ができるのを防止します。

抗凝固薬には、以前はワルファリンという薬しかありませんでしたが、4年前にDOAC※(direct oral anticoagulant /ドアック)が登場しました。
※DOAC=直接経口抗凝固薬。
当初、新規経口抗凝固薬としてNOAC(novel oral anticoagulant /ノアック)と呼ばれていたが、現在はDOACという呼称が推奨されている。

ワルファリンとDOACは特徴や適応が異なるため、どちらを使用するかは、患者さんの状態に合わせて医師が選択することになります。

薬を飲んでいても脳梗塞を再発してしまった場合は、薬の用法・用量は適切だったかをチェックして、不適切な人には、正しい用法に改めてもらいます。また、適切な用法・用量であったにもかかわらず再発した場合は、薬の変更を検討します。
動脈硬化など心房細動以外の原因がある場合は、抗凝固薬と抗血小板薬を併用することもありますが、脳出血などを起こしやすくなるので、細心の注意を払わなければなりません。

脳梗塞の危険因子を減らす努力を! 特に血圧管理


高血圧、脂質異常症、高血糖、喫煙などは、脳梗塞の再発リスクです。
とくに抗血栓薬を服用している場合、もっとも大事なのが血圧管理です。多剤併用療法をしている方や脳出血の既往のある方は、より徹底した血圧管理が必要です。
脳梗塞の2次予防には、血圧140/90を超えないようにします。ハイリスクの方はより低めの設定になり、130/80にコントロールするのがよいと思います。脳梗塞の再発予防のための最適な血圧の数値は、現在臨床試験が行われているので、その結果が待たれるところです。

日常生活でも脳梗塞の再発予防のために気をつけてほしいことはあります。
食事については塩分を控えたうす味にし、バランスのよいものを腹八分目食べましょう。うす味にしても、たくさんの量を食べてしまうと、塩分摂取量は多くなります。
運動は散歩など、その人の体力に合わせて行います。

また、なるべく外に出るようにして、人と触れ合うことは大切です。ご家族も患者さんが過ごしやすくなるようにさりげなく協力してあげていただきたいですね。

(取材協力/自治医科大学 内科学講座神経内科学部門 主任教授 藤本茂先生)




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