脳梗塞は時間との闘いです。
脳梗塞コラム
第4回 心房細動は要注意!長嶋茂雄監督のように脳塞栓を招く可能性が大きい
[2008.08.08.]
突然、「片手が効かない」「言葉が出ない」などの症状に襲われたときは
脳塞栓の可能性が大きい
われらがヒーロー、ミスタープロ野球こと長嶋茂雄さんが脳梗塞に倒れたのは2004年のことです。その後、懸命なリハビリに励み、今春(2008年)、NHKスペシャル「闘うリハビリ」に出演し、その見事な回復ぶりをアピールしたのは記憶に新しいところです。

「脳梗塞は、(1)動脈硬化などで脳の血管が狭くなって詰まる脳血栓と、(2)心臓など脳以外のところにできた血の塊が脳に流れてきて詰まる脳塞栓の2つに分けられます。長嶋さんは後者の脳塞栓を発症し、重大な後遺症を招いたのです」
こう指摘するのは横須賀共済病院循環器内科部長の高橋淳先生です。脳塞栓は突然、片手が効かなくなったり、言葉が出なくなったり、意識が朦朧とするなど症状がクリアカットに現れやすいのが大きな特徴です。
「脳塞栓の原因となる血の塊=血栓は、そのほとんどが心臓で生じます」
心臓で生じた血栓から引き起こされる脳塞栓を心原性脳塞栓症と呼びます。
脳塞栓のほとんどは心房細動という不整脈が原因
気づかないことも少なくない心房細動
心原性脳塞栓症を招く血の塊は、心臓が不規則な拍動を繰り返す不整脈から生じます。
「不整脈にはさまざまタイプがありますが、心原性脳塞栓症は心房細動という不整脈から引き起こされます」
ご存じのように心臓は通常1分間に50〜80回規則正しく収縮し、血液を全身に送り出しています。
「しかし、心房細動が生じると心房は細かくブルブルと震えるだけとなります。その結果、心房から心室にきちんと血液を押し出すことができなくなり、心房内の血液はよどみ血の塊をつくり、それが脳に流れて脳塞栓を起こしてしまうのです」
とりわけ怖いのは発作性心房細動です。
「突然の発作的な心房細動から心原性脳塞栓症を発症させてしまうことも少なくないからです」
それこそ脳塞栓症を起こして初めて、心房細動があることに気づく患者さんもいらっしゃるのです。
カテーテル・アブレーションは心房細動の根治療法
異常な電気信号の発生源を取り囲むように焼灼
発作性心房細動の治療法としては薬や電気ショックなどの対症療法がありますが、最近、大きな注目を浴びているのが根治療法としての心筋焼灼術(カテーテル・アブレーション)です。
「発作性心房細動は心房の中の不規則な電気信号の旋回(空回り)から生じます。その原因のほとんどは左心房の肺静脈開口部付近で発生する異常な電気信号であることが突き止められています」
異常な電気信号が発生しても、それが心房全体に伝わらなければ心房細動は起こりません。高周波電流で異常な電気信号の発生源を取り囲むように焼き、電気回路を遮断して心房細動が起こらないようにするのがカテーテル・アブレーションなのです。
「いわば左心房の壁にやけどをつくり、そのやけどを絶縁体として異常な電気信号の伝導をブロックするのがカテーテル・アブレーションなのです」
高橋先生はカテーテル・アブレーションのメッカであるフランス・ボルドー大学へ留学し、わが国にカテーテル・アブレーションを導入したパイオニアとして広く知られています。
治療効果を大きく左右する医師の技量
求められる微妙なカテーテル操作と焼灼
カテーテル・アブレーションはカテーテル(細い管)を太ももの静脈から挿し入れて心臓へ到達させ、左心房の壁にその先端をあてがいます。
「カテーテルの先端には4〜8ミリの電極が装着されており、電極に高周波電流を流して左心房の壁にやけどをつくります」
カテーテル・アブレーションの治療効果は、医師の技量によって大きく左右されます。

「たとえば、左心房の壁の焼き方が不十分であれば異常な電気信号をブロックできないし、焼きすぎると逆に合併症を起こしかねません。適切に焼灼するには微妙なカテーテル操作などが絶対的に求められるからです」
高橋先生部長が率いる横須賀共済病院循環器内科では、年間741件(2007年)のカテーテル・アブレーションを行っています。もちろん日本1の症例数であり、5名のベテラン医師団による充実した体制でカテーテル・アブレーションに臨んでいます。
けっして軽く考えてはいけない心房細動
熱い視線が寄せられるカテーテル・アブレーション
横須賀共済病院の発作性心房細動に対する治療成績は群を抜いています。
「1回のカテーテル・アブレーションで80%の患者さんの心房細動が根治し、2回の治療で92%の患者さんが治癒します。2回のカテーテル・アブレーションで心房細動が治まらなくても、抗不整脈薬の使用により98%の患者さんに不整脈の消失がもたらされます」
カテーテル・アブレーションを受けたのに「心房細動がきちんと治まらない」と嘆く患者もいる中で、驚くべき治療成績といえます。
心房細動は脳梗塞を起こす重大な要因の一つです。健康診断などで心房細動と診断されたら、けっして軽く考えてはいけません。病院などを受診し、適切な治療を受けることが求められます。
とりわけカテーテル・アブレーションは患者の肉体的負担が少ないうえに、心房細動を根治させる唯一の治療法です。生活の質(QOL)を向上させる有効な手段として、数多くの患者から熱い視線が寄せられています。
取材協力および画像提供:横須賀共済病院循環器内科部長 高橋淳 先生




