脳梗塞は時間との闘いです。

脳梗塞コラム

第2回 高血圧に注意して、脳梗塞を予防しよう!

[2016.05.20.]

いったん発症するとこわい脳梗塞ですが、生活習慣病の予防を心がけていれば、かなり防げる病気だといわれています。生活習慣病のなかでも、脳梗塞の最大の危険因子となるのが「高血圧」です。杏林大学脳卒中センター・外来医長の海野佳子先生に、高血圧と上手につきあい脳梗塞を予防する秘訣をお聞きしました。

血圧が高いと血管がダメージを受けて、脳梗塞が起こりやすくなる


血圧とは、心臓から押し出された血液が、血管の壁に加える圧力のことです。
高血圧が長く続くと、血管や心臓に無理な力がかかり、血管の壁がダメージを受けてだんだんに動脈硬化が進んでいきます。

脳の血管では、細い血管がダメージを受け、小さなこぶ(microanurysmと呼ばれる微小動脈瘤)ができます。すると、血管の壁がもろくなり、血流も乱れるため、血のかたまり(血栓)ができやすくなり、そこで血栓が詰まると「ラクナ梗塞」とよばれる脳梗塞を起こします。また、そこで血管が切れれば、高血圧性の脳出血になるのです。

一方、脳の太い血管で動脈硬化が起こると、血管の内側にかゆ状のかたまりができて、詰まりやすくなり、「アテローム血栓性脳梗塞」とよばれる脳梗塞を引き起こします。
また、血圧が高いと心筋の細胞自体に負担がかかり、心房細動という不整脈や心不全を起こしやすくなります。心房細動があると、「心原性脳塞栓症」という後遺症も死亡率も高い脳梗塞を発症しやすいことが知られています。

このように、高血圧が長く続くと、脳の血管があるときは詰まり、あるときは切れ、心臓にも悪影響を及ぼし、脳梗塞や脳出血を起こしやすくなるのです。

日本は昔から高血圧の人が多く、脳の小さな血管で起きるラクナ梗塞や脳出血が多いという特徴がありましたが、最近では、心臓から血液を送る大動脈や、大動脈からの血液を脳に送る頸動脈など少し太い血管の動脈硬化によって起こるアテローム血栓性脳梗塞や、心臓にできた血栓が原因で起こる心原性脳塞栓症が増えています。

血圧の目標値は「基本」140/90mmHg。持病がある人はさらに低めの目標を


血圧の目標値は、全員一律ではなく年齢や持病の有無によって、それぞれ目標値を設定するというのが現在の基本的な考え方です。また、日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン」で示される目標値も毎年のように見直されています。目標値を覚えても変わってしまって、混乱する方も多いのではないでしょうか。

そこでまず、血圧の「基本」になる数値として、「収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg未満、拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg未満」と覚えておきましょう。

中年世代(40〜60代)では、持病がなければ「基本」の数値を目標にします。
若い人(30代ぐらいまで)なら、少し厳しくして、130/85mmHg未満を目標にします。
高齢者では、前期高齢者の場合は基本の数値を目標としますが、後期高齢者(75歳以上)は少しゆるめの150/90mmHg未満を目標にすればよいといわれています。

また、持病がある人は年齢に関係なく、「基本」より低めの血圧を目標にします。
たとえば、糖尿病がある人、腎臓が悪い人、心筋梗塞の既往がある人は、130/80mmHg未満が目標となります。病気が加われば加わるほど、目標が厳しくなる、ということが大原則です。

脳卒中を経験した人も、目標を厳しくします。アテローム血栓性脳梗塞など太い血管の脳梗塞の既往者は140/90mmHg未満でよいですが、ラクナ梗塞、脳出血の既往者は、高血圧が原因で小さな血管が傷んでいるため、血圧が高くなると血管が切れる危険性が高いので、他のタイプの脳卒中の人より低めに目標を設定します。

家庭血圧は、医療機関で測るよりも低くなる




病院で測る血圧と、家庭で測る血圧が違う人が大多数です。
病院で測る場合は、待たされたり緊張したりするだけでなく、時間帯の差もあると思いますが、家庭で測るよりも多少高い数値になります。最新の「高血圧治療ガイドライン」では、家庭血圧を優先する方針となっています。

先に説明した目標値は、医療機関で測定した場合を想定していますので、家庭で測るときには、先ほどの数値より5mmHgくらい低い数値を目標にするとわかりやすいかと思います。

血圧の目標値を超えた場合は、まず、減塩と運動を3カ月続ける


高血圧は長くつきあう病気です。健康診断などで初めて高血圧を指摘されたり、徐々に血圧が高くなって目標値を超えてしまったという方は、最初からお薬で治療するのではなく、まず、塩分制限などの食事療法と運動療法を始めるのが原則です。
食事や運動による治療は、効果が出るまで少し時間がかかりますから、3カ月ほど継続し、改善しない場合は、降圧剤による治療を始めるとよいと思います。

ただし、血圧が高いことで急激な悪化が懸念される病気をもっている人は、初めからお薬による治療が必要です。たとえば、脳卒中や心不全で入院した際に高血圧がわかったという場合は、すぐに高血圧の薬物治療を始めます。
また、腎臓が悪い人も、高血圧を放置すると急速に腎機能が落ちてきて元に戻らなくなることがあります。このような場合は、最初からお薬で治療します。

徐々に塩分を減らし、1日6gを目標に!


日本人の塩分の平均摂取量は、11〜12g程度といわれています。国民の健康増進を推進するために国が行っている施策「健康日本21(第二次)」では、平成22年では10.6gだった食塩摂取量を平成34(2022)年には8gとする目標を掲げています。

私たちの病院では、入院中の脳卒中や心臓病の患者さんの食塩摂取量を、1日6g以下を目標にしています。1日6gというと、一般の方が普段摂取している量の3分の2から半分ぐらいとなり、かなり少ないイメージではないでしょうか。
高血圧の予防や治療には、最終的には塩分を6g程度に制限するのがベストです。とはいえ、突然6gにするというのは、味気なく感じてしまい難しいかもしれません。時間的に猶予がある場合は、今とっている食塩量の2割程度を減らすことから始めて、段階的に何年かかけて減らしていくと無理なく減塩できると思います。

●塩分カットのコツ
@汁物は1日1食以内に
1日3食すべてに味噌汁などを添えると、食塩量6gをオーバーしてしまいます。食事には味噌汁やスープをつけるもの、と考えがちですが、高血圧の予防や治療をするときには、汁物は1日1食程度にとどめるのがよいでしょう。汁物を減らすことは、手軽で効率的な減塩の方法です。


Aパン食は意外と塩分過多に
主食を白米にすると塩分の多いおかずをとってしまうからと、パン食に替える人がいますが、実はパンそのものに塩分が含まれていますので、注意が必要です。朝食をパンとベーコンエッグ、チーズなどのメニューにすると、食塩量がかなり多くなってしまいます。



B市販の食品は、栄養成分表示を見て塩分をチェック
スーパーなどで食品を購入するときには、栄養成分の表示を見て、なるべく塩分の少ないものを選ぶのがコツです。
たとえば鍋をするときに使うレトルトのスープでは、塩味や塩ちゃんこ味よりキムチ味など濃厚な味付けのほうが食塩量も多いものです。食塩量が15gの4人前のものを2人で食べると、それだけで塩分過多になってしまいます。また、自分で感じる塩味と、実際に入っている食塩量には少しずれがあることもありますから、表示の数字をチェックしておくと、上手に減塩できると思います。

Cナトリウムの量は2.5倍すると食塩相当に
栄養成分表示の塩分は、ナトリウム量で記載されていることもあります。ナトリウム(mg)は、大体2.5倍すると食塩相当量になります。ナトリウム800mgなら、食塩相当量は約2000mg=2gです。

ウオーキングを毎日30分以上、続けよう

高血圧に対する運動療法は、話しながらできる程度の運動を毎日するというのが基本です。簡単なのは歩くことです。高血圧や糖尿病の人の運動は、趣味ではなくて治療の一つですから、雨が降ったら休むというのではいけません。普段歩いていない人なら1日30分を目標にしてください。歩きなれている人はもっと長くてもかまいません。

減塩と運動を3カ月続けて変化がなければ、降圧薬で治療を


減塩を主体とした食事療法と運動療法を3カ月続けても血圧に変化がなければ、降圧薬の治療を始めます。
降圧薬にはさまざまな種類があり、それぞれしくみが異なります。どのタイプの降圧薬がいいかは、年齢や持病の有無などによっても違いますから、担当の先生と相談するのがよいでしょう。


取材協力/杏林大学病院脳卒中センター 海野佳子先生



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